2016.11.28

都会と田舎の間、ちょうどいいバランスのとれた街──工藤慎一さん #吉祥寺

お隣の西荻は懐かしく独特な街

 小学生から高校生と多感な時期を吉祥寺周辺で過ごしてきた。住まいは吉祥寺と西荻窪の間だったから、もちろん隣の西荻窪もテリトリー。西荻窪駅南口の和菓子店、越後鶴屋の店員とのふれあいが、強く子ども心に残っているという。

「小学生の頃、学校帰りによく寄っていた“おもちやさん”ですが、イチゴ大福がすごくおいしくて。当時1個160円くらいでしたけど、お金が足りないときでも『いいよ』といっておまけしてくれたり、『もう一つ持って行きなよ』といってくれたり、お店のおやじさんがとにかく優しいんですよ」

 西荻窪のよさは「地元の人たちとの距離感の近さ」だという工藤さん。それをもっと多くの人に知ってもらいたいそうだ。「西荻は独特」の一例として、新宿以西の中央・総武線沿線で唯一、スターバックスがないらしい。

「個人経営のカフェなどが住宅地のようなところにもポツポツとけっこう点在しています。地元の人たちがよく利用しているんですが、カフェというより喫茶店と呼んだほうがしっくりくる店とか。そういう店は落ち着くというか、すっと体になじむんですね。話は変わりますが、越後鶴屋の近くのアイスクリーム工房ぼぼりっていう、オーガニックなアイスクリーム店も好きですね……」

 地元の友だちに西荻を語らせたら何時間でもしゃべり続けますよ、と笑う工藤さんだが、知らず知らずのうちに自身の話にも熱がこもっている。

店内にハンモックのあるユニークなカフェ

 話を吉祥寺に戻そう。

 東急百貨店の北側から西へ向かってのびる細い通りは、大正通り商店会という名で呼ばれている。工藤さんはここに吉祥寺という街の特徴がよく出ているという。一方通行の道の両側には食事、ファッション、雑貨・インテリア、美容など、業種は違ってもいま風の店構えの店舗が並んでいるが、東急百貨店より先は高い建物が見当たらない。

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個性的な店が並ぶ大正通り商店会

「条例で規制されているのかどうかわかりませんが、駅から少し離れるとこうした通りがいくつもあります。生活感があるなあって思うんです。住んでいる人の顔が見えるというか。道の真ん中に立ってまっすぐ通りの先を見ると、空が広く見えるし、いい感じじゃないですか?」

 昔ながらの商店街のたたずまい、生活感がたしかに感じられる。少年時代を過ごした地元住民は、そこに懐かしさを覚えるのかもしれない。生活の基盤がある街であり、友達と集まり遊ぶ街でもある吉祥寺。もちろん、デートにもおすすめだ。

「デートで公園や映画に行ったあとはやっぱりカフェ。JRのガード下にあるCAFE ZENONは店内にアーティストやクリエイターが創作する漫画があっておもしろいんです。こんなところがあるんだ、って女の子たちも興味を持つと思いますよ」

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漫画をテーマに遊び心にあふれたCAFE ZENON

 吉祥寺はカフェにこと欠かない。ほかにはどんなところがおすすめだろう。

「井の頭公園の近くにあるハンモックカフェ マヒカマノかな。店内にいくつもハンモックが吊るされているんですよ! ハンモックに腰掛けながらコーヒーが飲めるんですけど、そのまま横になってもいいし、ユニークな店なんです」

 憧れの街、吉祥寺。長く暮らしていた工藤さんに改めて地元の魅力を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「吉祥寺は、都心と田舎――田舎と言うと語弊があるかもしれないけど――の中間地点にあると思うんです。中央線で新宿へ、井の頭線で渋谷へのアクセスもいいし、反対に西に向かえば中央線で40分ほどで高尾まで行って高尾山で山登りができる。繁華街過ぎるとせわしさがあるし、逆に田舎すぎると刺激が足りなくて何をしたらいいのかわからなくなる。その中間、ちょうどいいバランスのとれた街なんです」

話してくれた人

工藤慎一 くどうしんいち 

2015年に24歳でecbo株式会社を設立、代表取締役CEOに就任。身の回りのモノをスマホで預けて管理する「かんたん収納アプリecbo」を開発、運営。現在は、おもに外国人旅行者向けにデリバリー付きの荷物預かりサービスのアプリ「ecbo cloak(エクボクローク)」の運営に注力している。

話を聞いてくれた人

田辺英彦 たなべひでひこ

旅行関係のガイドブック、ムックなどの編集制作を請け負う有限会社クロッシング代表。出版・広告関係の業界誌特派記者を経て、現在も自ら取材、執筆を行う。