2016.12.14

ハブとなる街は遠からず近すぎない距離感で──筧昌也さん #下北沢

 その意味で、経堂はオフになれる場所だという。マンションは3階建てだが全4室、1階に筧さんの部屋がある。6畳2間にキッチンが付いた2DKで約35平米の広さ。自宅兼オフィスでもあるが、オンとオフがきっちり分かれる間取りになっている。

「東京農大の最寄り駅が経堂で、周辺にも大学は多いから、賃貸はワンルームや1Kの物件が多い。あとは子どもひとりの夫婦用の物件とかで、ぼくの望むような物件は少ない。その点ではラッキーな出物でした。玄関からふたつの部屋へは別々に行く形で、ひと部屋を仕事場にしていますが、キッチンやテレビが目に入らないのはもちろん、余計な音もシャットアウトでき、隔絶した部屋になっています。そういう意味で、街よりも住まいの構造のほうがけっこう大事かもしれない」

気分転換に下北のカフェで仕事

 下北沢にはよく出かけるが、フリーランスの筧さんにとって、下北は第一に仕事場だ。

「下北は自転車で行ける範囲なので、気分転換したいときなどよくカフェを利用します」

 といっても、コーヒーを飲んでぼーっとするわけではない。

「監督業なんで絵コンテを描いたり、たまに脚本も書いたりしますが、いろんな作業があって、作業の内容によっては自宅じゃないほうがはかどることがあるんですよね。そういうときに、下北に来るんです」

 この日、インタビューをしたのは西口からほど近い、地下1階にあるヴィレッジヴァンガード・ダイナー。「遊べる本屋」のヴィレッジヴァンガードが経営する。ここも筧さんがよく利用する店のひとつだという。

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手作りハンバーガーが人気のヴィレッジヴァンガード・ダイナー

「下北沢の西口は、南口のように人がたくさんいないので、ここも空いていて穴場なんですよ。自分にとってちょうどいい雑音とちょうどいい静けさがある。うるさすぎると仕事ができないし、かといってシーンとしているのも集中できない性分なんです」

 ここ以外にも下北沢でよく行くカフェが4、5軒ある。作業の内容や気分で使い分けている。夜、下北沢で飲む約束があるときなどは、例えば午後7時に待ち合わせをすると、午後1時に下北沢に来て、3時間ずつ2軒のカフェをはしごして仕事をする、なんてことも。

「そのほうが朝から活動的になって効率がいいんですよ。店によってパソコンが使えるところと、執筆に適したところがあって使い分けたり。でも、よく行く店の名前を覚えていない。カフェの名前って、なんだか覚えられない。ファストフード系なんかは覚えているんですけどね(笑)。北口のフレッシュネスバーガーモスバーガーは学生が少なく、わりと静かなので利用しますね」

 映画や演劇は好きで観に行くけれど、まったくプライベートというわけではない。どちらも確実に仕事に反映される。仕事柄、まったくの趣味で仕事と無関係、ということはないのだろう。街を歩いていても、電車に乗っていても、人間観察が演出の参考になるように。

話してくれた人

筧昌也 かけひまさや

1977年東京生まれ。日大芸術学部映画学科映像コース卒業。企業VPの制作会社に入社。アニメーションや CG制作をする。退社後、フリーのディレクターとして活動。2003年、映画『美女缶』ゆうばり映画祭グランプリなどを受賞し、04年に劇場公開される。05年には『世にも奇妙な物語 春の特別編』にて妻夫木聡を主演に迎えセルフリメイク。連続ドラマロス:タイム:ライフ』(08.2〜CX)では原案、チーフ監督、脚本を務める。同年春、初の長編映画『Sweet Rain 死神の精度』(主演:金城武)が劇場公開。その後、WOWOWドラマ『豆腐姉妹』(吉高由里子)、テレビ朝日『死神くん』(大野智)、フジテレビ『素敵な選TAXI』シリーズ(バカリズム脚本、竹野内豊主演)などの監督を歴任した。映像の他にイラスト、漫画(『パフューマン』第68回ちばてつや賞佳作受賞)も手がける。2017年7月6日(日本テレビ系 11:59~)からスタートする連続ドラマ『脳にスマホが埋められた!』でもチーフ監督を務める。

話を聞いてくれた人

田辺英彦 たなべひでひこ

旅行関係のガイドブック、ムックなどの編集制作を請け負う有限会社クロッシング代表。出版・広告関係の業界誌特派記者を経て、現在も自ら取材、執筆を行う。