2017.2.21

上京してひとり暮らしと自分の店をはじめた街──大林凌さん#恵比寿

恵比寿は人情に厚い街?

 恵比寿は「人情がある街」と大林さんは言う。いまはビルの建て替え工事をしているが、隣に昔からある古い中華料理店があって、この一角は下町感が残っていたという。

「近所の人にはだいぶ助けてもらいましたね。うちのトイレが詰まったら隣の中華屋にすっぽん(ラバーカップ)を借りに行ったり(笑)、お好み焼きの出前を頼んでくれたり。祭りや行事に参加はしないけれど、商店会に加入して横のつながりも増えました。恵比寿の仲間が知り合いを連れて来てくれて、その知り合いがまた別の知り合いを連れて来てくれたりしましたね」

 もちろん、大林さん自身の人柄や運もあるだろう。加えて、この街には地元の仲間として受け入れて街を盛り上げていこうという雰囲気がある。この街の居心地の良さ、暮らしやすさをあらためて感じたそうだ。

愛犬がきっかけで引っ越すハメに

 店の近くのマンションに2年間住んだあと、大林さんは港区白金に引っ越した。といっても、恵比寿通りを東へ坂を下り、恵比寿3丁目の交差点を越えると、もう白金だ。

「店が深夜まで営業しているので、電車があるうちに帰れない。だからどうしても店から歩いて帰れる範囲になってしまいます。それに白金といっても家賃が安かったんで」

 5年間、休みなくひとりで働いてきたかいもあり、2013年5月には恵比寿駅西口に2軒目となる恵比寿店をオープンさせた。それを機に、恵比寿店近くの代官山に部屋を借りて引っ越すが、2年ほどでまた白金に戻ることになる。

「代官山に住んでいるときに結婚してふたり暮らしを始めました。ペットは不可だったんですが、結婚前からヨメはトイプードルを飼っていたんで、ここでもこっそり。それがバレて出て行かなきゃならなくなって……」

愛犬とお気に入りのレストランの前を散歩

 いま住んでいる白金のマンションはいまり東京本店から歩いて10分ぐらいと近い。広くてペット可の物件を代官山〜恵比寿〜白金エリアで探してようやくみつけた。それでも、愛犬はいまや生活の一部で、犬を連れて街を散歩するのが日課になっている。時どき、恵比寿ガーデンプレイスまで足をのばしたり、休日には自転車に乗せて、奥さんと一緒に代々木公園へ遠出したりもするそう。

「最初はヨメが飼ってたんですけど、昼間はほとんどぼくが面倒を見ている状態。いい子なんですよ」と大林さんは目尻を下げる。

お気に入りはこだわりの店

 恵比寿でお気に入りのスポットやお店などを聞くと、「季節感を感じる生活じゃないし、夜、仕事が終わってから飲み歩くというタイプでもない。割と地味な生活です」と笑う大林さんだが、仕事柄か、食べ歩きはよくしているという。

「昼ごはんは毎日外食なので、だいたい白金、恵比寿エリアで食べますね。本店のすぐ近くのフレーゴリというイタリアンレストランは、犬と一緒に入れるんですよ。よく食べるのはパスタですが、オーナーが熊本出身なので、夜は名物の馬肉を使った料理などもあります。前にロバの肉なんてメニューもあったけど、これはちょっとアカンかった(苦笑)。それから恵比寿3丁目交差点に近い、首都高の高架下にあるとんかつすずきもおいしい。ロースかつはもちろん、豚汁や漬物などメイン以外も手を抜かずに作っていて、漬物が分厚いキュウリのぬか漬けだったりするのも自分的にはポイントが高い(笑)」

 料理がおいしいだけでなく、店のたたずまい、接客などが自分の店の参考になるようなレストランもある。

「本店から歩いて15分くらいの、明治通り沿いにあるビストロエビスは、夫婦ふたりでやっていて、うちと同じカウンター席のみで夜だけの営業ですが、ちょいちょい行ってます。シェフはオテル・ドゥ・ミクニやパリの有名レストランで修業した人らしく、料理は本格的だけど堅苦しい雰囲気がない。それに、お客としゃべる奥さんの距離感がちょうど良くて居心地がいいんです」

”アーバンガーデニング”がコンセプトのビオトープ

 大林さんがよく通う店がもう1軒、白金の自宅マンション近くにある。

ビオトープというショップです。Adam et Ropéの本店だったとこですが、スタイリストの熊谷隆志さんがディレクションしてリニューアルしたんです。『生き物本来の生態系が保たれた空間』がコンセプトで、植物やガーデニングのアイテムなどもあって、ヨメと一緒に散歩がてら寄ったりします。カジュアルですがシンプルで着心地のいい服が気に入っています

話してくれた人

大林凌 おおばやしりょう

兵庫県尼崎市出身。お好み焼き「いまり」オーナー。恵比寿に2店舗と4月には五反田店もオープン予定。実家の味を受け継ぐ関西風のお好み焼きだが、「いまり」流のオリジナリティもだしていて根強い人気を誇る。スタッフを集めて月に1回は試食会を行い、技術のブラッシュアップは欠かさない。出店ベースの店舗展開ではなく、味とスタッフ重視の、地に足の着いた経営を信条としている。

話を聞いてくれた人

田辺英彦 たなべひでひこ

旅行関係のガイドブック、ムックなどの編集制作を請け負う有限会社クロッシング代表。出版・広告関係の業界誌特派記者を経て、現在も自ら取材、執筆を行う。